安全とは
第1回の教育で電気管理技術者がどんな仕事をしなければならないか話しました。次に仕事が始まる中で本当は一番初めに話しておかなければならない内容である安全の話をします。外部委託の電気保安管理をするための安全とは何かを知っておかなければ事故につながりかねません。今まで自社の電気設備を何百回何千回と点検してきた人でも他社の設備を点検するとなると勝手が違います。最低限の知識を知ったうえで安全に点検していってください。
労働安全衛生規則
安全用具
労働安全衛生規則で定められてた絶縁用保護具等の定期自主検査を6月以内に1回行わなければいけません。電気管理技術者に関係する絶縁用保護具として代表的な器具はは、安全帽、高圧ゴム手袋、高圧ゴム長靴、ディスコン棒、高圧絶縁シート、検電器などがあります。高圧電路に近づいたり触れたりする仕事なので感電しないようにしっかりとした管理が必要です。
検電器
目に見えない電気を可視化する装置として検電器というものがある。
検電器は電気が充電されている場所に検電器の先端を近づける若しくは接触させると音と光で充電していることを知らせてくれる装置です。
どんなにベテランの電気管理技術者になっても電気は見えません。
ベテランとなり見えてくるのは経験を基にした予測ができるようになるだけです。
その予測のおかげで作業を効率的に回すことが出来るようになります。回路での電気の流れを頭の中でイメージできるので、次の行動が速くなります。
この予測ができるというのは重要な反面、とても恐ろしいのです。
ベテラン技術者が事故を起こす一番の原因となります。
ベテランは正常に機能している設備において、検電しなくてもどの回路が充電されていて、どの回路が無充電なのかが頭の中で解ります。
検電器は「無充電を確認する装置」と言われます。充電していることを確認する装置ではないのです。
なのでベテラン技術者は経験を基に、充電されていた回路が開閉器の操作後に無充電になっているかどうか確認するため検電器を使います。
正しい使い方ですが、大変危険な場面にもなりえます。
ベテランであるがゆえに「DSが開放してあるのだから当然無充電状態だろう、だから検電する必要なし」と思い検電せずに回路に近づいてしまう場合があります。
新人であればどこが充電状態でどこが無充電状態なのかが判断できないため、とにかく自分が近づく場所に関して検電を行い安全を確保します。
ベテラン技術者は「正常で想定通りの設備」においては安全ですが、想定外の設備に出会った場合感電してしまう確率が高くなります。
DSを開放した後、電源側のみを検電する人、電源側と負荷側両方とも検電する人いますが、電源側からの流入がないかを確認するために検電するのは当然として、自分が触る可能性がある負荷側も検電するのがより安全です。
意味のない検電は時間の無駄とか言うベテラン技術者がいますが聞く必要ないです。
人間は難しいルールを作ると守らない生き物なので、
「電気回路に近づく場合は、充電状態なのか無充電状態なのか関係なくとにかく検電してから近づく」というルールを徹底することが感電事故を起こさない第1歩だと思います。
短絡接地器具
短絡接地器具は高圧電路で作業する作業員の命を守る重要な装置です。電路を短絡接地するので万が一取り付けたまま電気を受電すると大爆発を起こして電力会社側が停電します。そんな大事故を起こしてでも高圧電路で作業している作業員を感電させないようにする装置が短絡接地器具です。この装置は命を守る装置ですが、取り扱いを間違えると逆に危険な装置になりかねない器具です。充電中に取り付けようとして感電してしまう技術者がいたり、作業が終わって電気を受電するのに取り外し忘れをして大爆発を起こしてしまう技術者もいます。細心の注意をもって取り扱ってください。
作業安全心得
肝を据える
労働安全衛生規則やその他安全規則など様々な安全に関する心得や手段が記載されたものがありますが、その規則をしっかり守れば事故など起きないのは間違いありません。しかし、その規則を守れない場合が数多くの場面で発生します。代表的な例が偉い人が高圧的に作業に介入してきたとき焦って規則とは違う動作をしてしまうことです。上司がやれといったからやったというのは言い訳になりません。俺の言うことを聞けと電気主任技術者でもないのに指示する社長などいくら相手が偉くても言われたとおりに動けば事故につながってしまいます。そんな時でもしっかりと肝を据えて安全作業を行えるようになりましょう。
事故事例
高所作業
電気事故のほとんどが低圧電路に触れて転落するなどの事故です。脚立を使った作業や高いところでの作業はフルハーネス型の墜落制止用器具を使用し脚立は転倒しないよう固定できる方法を探しましょう。
検電せず
検電器は電気技術者の命綱と前述しましたが、その命綱を使用せずに感電する技術者が後を絶ちません。Tシャツ一枚で登山に行くようなものです。運が良ければ助かりますがそのうち事故が起きます。大切な自分の命です、めんどくさがらずに検電してから電路には近づきましょう。
タイムリミット
事故原因の中でタイムリミットは無視されがちですが、事故の起こる原因の一番大きい部分はタイムリミットによる焦りです。チェックリストを作り安全に作業しているつもりが時間がないためにチェックリストを無視して作業することになることなどざらにあります。停電作業の時などできる限り長い時間停電できるよう交渉し、素早く作業することで確認作業の時間を確保しましょう。
物忘れ
人間は年齢とともに物忘れが激しくなっていきます。これは逃れられない事実です。意識で何とかしようとしても物忘れはしてしまうものです。そこで作業で重要なのは物忘れしても重大事故につながらない作業の仕方を身につけることです。キュービクルの中にはできる限り物を持っていかない。端子を取り外す場合は同じ人が取り付けるなど細かいことですが現場で間違いが起きないようにしましょう。
パートナー選び
一緒に作業するパートナーには合う合わないがあります。性格的に合う合わない、技術的に合う合わないなど一緒に作業する人が自分のやり方に合わせられる人でなければ齟齬が生じ事故につながります。意思疎通のミスによる事故も毎年起きていますので一緒に作業する人とはしっかりコミュニケーションをとって作業しましょう。